2026年9月19日(土)、駐中国日本大使館広報文化センターにて、「兔儿爺(とぅあ~いえ)に学ぶ北京伝統工芸講座 第二回~色付け体験ワークショップ~」を開催しました。当日は20名の皆さまにご参加いただきました。

昨年に引き続き、北京市西城区無形文化遺産「北京泥彩塑」の代表性伝承者である張忠強先生を講師にお迎えしました。参加者の皆さまには、張先生のご指導のもと、中秋節に飾られる北京の伝統的な民俗造形「兔儿爷」の色付けを体験していただきました。伝統的な造形をもとにしながら、それぞれの感性によって色彩を施し、個性豊かで彩りあふれる「兔儿爷」が完成しました。

本講座では、北京大学中国語言文学系博士課程で民間文学を専攻する船越が、張先生の日本語通訳を務めるとともに、中国と日本における「月のうさぎ」の表象の違いや、「兔儿爷」にまつわる伝説について解説しました。造形を実際に手に取り、色を施すという体験を通して、参加者の皆さまに北京の民俗文化をより身近に感じていただけたのではないかと思います。「芸術の秋」だけでなく、物語や伝承に親しむ「文学の秋」としても、この時間を楽しんでいただけていたら嬉しく思います。

「北京泥彩塑」は、単なる伝統的な土人形の制作技術にとどまらず、北京の地域文化を形あるものとして伝えていく重要な役割を担っています。そこでは、英雄や歴史上の人物、そして「兔儿爷」のような伝説や物語の登場人物など、中国の長い歴史のなかで育まれてきた文化的なイメージが、粘土という身近な素材によって具体的な姿を与えられます。物語や伝承は、言葉によって語り継がれるだけではありません。人や動物、神話・伝説の登場人物などが造形物として目の前に現れることで、抽象的な文化的イメージが子どもたちにも理解可能なかたちとなり、地域の歴史や価値観、文化的な知識に触れる契機となります。そうした意味で、「北京泥彩塑」は造形芸術であると同時に、地域社会における文化の伝承を支える一つの媒体でもあるのではないかと感じています。今回の文化講座を通じて、参加者の皆さまが北京に根ざした身近な文化に触れ、その背景にある物語や伝承にも関心を持っていただく機会となっていれば幸いです。今後も、こうした体験を通じて、日中双方の文化について考え、語り合う場をつくっていければと思います。
文章/船越智絵
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