2023年度《北京市における秋の花粉症対策について》

2023-09-27

毎年8~10月の間、北京市を含む中国の北部地域は秋の花粉飛散時期を迎えます。現時点(9月27日)では既にそのピークは過ぎてはいますが、鼻アレルギーの患者さんにとってはまだまだつらい時期が続きます。春に飛散する花粉は主に樹木のもので、粒子が大きく、それほど遠くまで飛散しません。それに対し、秋に飛散する花粉は雑草のもの、主にはヨモギ(含.砂ヨモギ)やブタクサのもので、粒子が小さく、空中に舞い易く、風に乗って遠方まで飛散します。

中国の砂漠地帯は内モンゴル自治区から新疆ウィグル自治区にかけて153.3万㎡も存在し、これは日本の全面積(37.8万㎡)の4倍に当たり、そこから強風で舞い上がる黄砂の被害はご存じの通りです。その砂漠地帯に広範に自生する“砂ヨモギ”(以下2枚写真)は黄砂被害を抑えてくれる英雄ですが、同時にその花粉は内モンゴル自治区~新疆ウィグル自治区の人々に深刻な花粉アレルギー(鼻アレルギー)をもたらしており、この9月上旬、内モンゴル自治区で雨上がり後の集団的で重篤な花粉アレルギー“事件”を起こしていたことが記憶に新しいところです。

この砂漠地帯に自生する“砂ヨモギ”の花粉は遠く北京市まで飛来しており、それによる鼻アレルギー発症もずいぶん前から問題視されています。

さて、上記のような現状に対し、VISTAメディカルセンター(VISTAクリニック)から『内モンゴル花粉症対策』と題する文章を頂きましたので、以下にペーストしておきます。是非、ご参考下さい。

『内モンゴル花粉症対策』

夏から秋にかけて一部の植物から飛散する花粉は空気を汚染するだけでなく、花粉アレルギー患者にアレルギー発作を誘発します。これは花粉汚染とも呼ばれています。立秋前後、中国北方地域の草花は花粉を飛散させ始め、多くの花粉アレルギー患者に目の充血、目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、咳などの症状をもたらし、重症者では皮膚紅疹、喘息などの症状も起ります。そのため、秋になると花粉汚染から遠ざかるように注意されておられる患者さんが多いです。

花粉汚染は年々進んでいます。統計によると、中国の緑化面積の10 年ごとの増加率は10%を超え、全国的な緑化運動は明らかに中国人の生活環境を改善して来ていますが、植樹の増加は植物の種類、我々が吸入する花粉の総量の増加をもたらし、アレルギー体質の人々に新たな挑戦をもたらしています。植樹のほか、国家間の頻繁な往来に伴い、外来植物の花粉もますます多くの人々を悩ませ始めています。例えば、北アメリカ州由来のブタクサは今や世界の夏秋の花粉アレルギーの主要なアレルゲンの一つになっています。アレルギーを引き起こす花粉は風に乗って拡散するため、地域を跨ぎます。例えば、北京/天津/河北地区のヨモギ属花粉は地元で発生したものもあれば、周辺地域から飛来ものもあれば、一部は海外から飛来ものもあります。アレルギー性疾患はアレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎、じんましん、食物アレルギー、薬物アレルギー、アレルギー性ショックなどを含み、アレルゲンに対する人体の過剰免疫反応です。

花粉汚染には特定の時空範囲があります。花粉の飛散には明らかな地域性と季節性があり、アレルギー症状の出現は、地域と季節と密接に関連しています。春と秋の季節、中国北方地域は乾燥し風が強いため、花粉アレルギーは南方地域より広範で深刻です。中国北方地域の春季の樹木花粉(例えば柳、柏、樺、楡)と秋季の雑草花粉(例えばヨモギ、ブタクサなど)は、季節性呼吸器系アレルギーを引き起こす主要なアレルゲンとなっています。花粉の飛散シーズンには、外気中に爆発的にアレルゲンとなる花粉が浮遊しますので、屋外だけでなく室内でもアレルギー症状を引き起こすに十分な濃度となります。花粉は長時間空気中に浮遊しますので、花粉アレルギー患者さんでは急性アレルギー発作を起こし、苦痛に耐えられない状況になり得ます。目の充血と搔痒を伴う結膜炎症状、くしゃみや鼻汁を伴う鼻炎症状だけでなく、37%のアレルギー患者さんでは5 年以内にアレルギー性喘息に発展します。一部の患者さんではアレルゲンとなる花粉に関連する植物由来食品を食べることによってアレルギー性ショックを起こしますので、適時に有効な治療が得られなければ、患者さんは生命を脅かされることになり、場合によっては長期治療を強いられQOL(生活の質)が深刻に損なわれることになります。

花粉汚染を回避するには、ドアや窓を閉め、空気の流れを遮断しなければいけません。条件が整っている家庭では空気清浄機等を併用し、室内の空気体積当たりの花粉粒子密度を減らすべきです。車で外出する場合には窓を閉め、エアコンは空気内循環モードとします。疫病予防/抑制期間中での外出時には、マスクと花粉防止メガネを同時に着用します。実験によると、花粉防止眼鏡を着用することで花粉粒子と目の結膜との接触を約65%減らすことができることが分かっています。性能の高い花粉防止マスクを装着することで、花粉粒子を吸着濾過出来ますので、アレルギー患者さんの気道を良好に防御することが可能となります。1 日のうち花粉飛散量が多いのは通常午後です、どうしても外出しなければならない時は、できるだけ時間をずらして外出しましょう。雷雨は空気中の花粉粒子の清浄能力を減弱し、花粉粒子を膨潤させて感受性の高い小粒子にしますので、雷雨の前後には決して外出しないでください(この9月上旬の内モンゴル自治区での雨上がり後の集団的で重篤な花粉アレルギー“事件”は正にこれです)。

疫病発生期間中、アレルギー患者さんでは花粉アレルギー発作のため、鼻汁や涙を拭くためにマスクや眼鏡を頻繁に外す必要がありますが、この時、清潔に注意し、手がマスクの外側に触れるたびに手を丁寧に洗います。また、ウールの服は綿や化学繊維の服よりも静電気を発生させやすいので、花粉を吸着させやすくなり、花粉を室内に持ち込みやすくなりますので、外出時には服の素材に注意し、且つ表面が滑らかな服を選びましょう。帰宅時には服の表面や髪に付着している花粉に対応すべく、洗髪や上着の着替えが必要です。

文章作成:
生活環境委員会 喬菲 VISTAメディカルセンター(VISTAクリニック)
生活環境委員会 副委員長 重村新吾

文責:
生活環境委員会 副委員長 重村新吾

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