2024年11月13日(水)「インフルエンザ感染対策セミナー」開催報告(含質疑応答)

2024-11-18

2024年11月13日(水)10:00~11:40、日本大使館広報文化センター内 ブリーフィングルームにて、インフルエンザ感染対策セミナーを開催しましたので、会場での質疑応答の内容を含めて報告します。

当日は19名の皆さんにご参加頂き、森川医務官と張慶慶Drよりインフルエンザと新型コロナに関する最新情報をお話して頂きました。

森川医務官からは、ウイルスと人類との戦いの歴史からインフルエンザウイルスと免疫のメカニズムについて楽しく分かりやすくお話をして頂き、ワクチン接種の必要性と効果について詳しく説明して頂きました。そして昨年の感染推移グラフを提示して頂き、今年も間もなく北京でもインフルエンザ流行期が始まると注意喚起をして頂きました。また事前に寄せられていた質問への回答も詳細に回答して頂きました(↓「質疑応答(一部報告)」に記載)。

張慶慶Drからは北京市の現時点におけるインフルエンザ感染状況を紹介して頂き、北京市で接種出来るインフルエンザ予防ワクチンを価格を含めて詳しく紹介して頂きました。また中国でよく処方されるインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」、「タミフル」、「感冒清熱顆粒」、「連花清瘟胶嚢」、特に純然たる漢方製剤の「感冒清熱顆粒」と「連花清瘟胶嚢」(↓「質疑応答(一部報告)」にパッケージ写真掲載)の中医学的見地からの対象症状と具体的な使い方を説明して頂きました。

インフルエンザ予防ワクチン接種に関し、森川医務官から「6歳以下の児童への発症予防率はおよそ60%(2015-2016シーズンデータ)。65歳以上の方への発症予防率は34~55%(〃)だが82%の死亡阻止が期待出来る。健康な成人への発症予防率は20~30%だが重症例の改善/入院期間の短縮効果が大きい。」との説明があり、張慶慶Drからは「接種後2週間で抗体が出来、予防接種の効果は半年後から徐々に下降して来ますが 、最長一年間は持続します」との説明がありました。まだ接種されていない方は今からでも遅くないですので、接種されることをお勧めします。

以下は「質疑応答(一部報告)」です。

[(事前提出)質問1.]
以前「タミフル」他の抗インフルエンザ薬投与による飛び降り等の異常行動がニュースで騒がれていましたが、今はどうなのでしょうか?
[回答1.]
タミフルの添付文書を要約すると以下の如くです。ご参考下さい。
①.因果関係は不明であるものの、10歳以上の患者が本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されているため、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。
②.小児・未成年者については、万が一の事故を防止するため、内服開始後は、(1)異常行動の発現のおそれがある(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮する。
③.インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告がある。
④.インフルエンザウイルス感染症の予防の基本はワクチン療法であり、本剤の予防使用はワクチン療法に置き換わるものではない。

その後の調査により、異常行動はタミフル内服にかかわらず、インフルエンザそのものによるものと判断されており、「内服を差し控える」という文言が新しい添付文書から削除されていました。大変失礼致しました。正しくは以下です。
①異常行動は、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時に発現していた。
②異常行動の監視は、「タミフル内服開始後2日」ではなく「発症から2日」の間、講じること

参考:現在のタミフルの添付文書
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00050037

[(事前提出)質問2.]
厚労省のホームページを見ると「小学生以下の子どもも新型コロナの重症化リスクが高いので冬季にはインフルワクチンとコロナワクチンの両方を接種すべき」と記載がありますが、昨年3月にWHOは「全ての子どもへの3回目以降のコロナワクチン接種は推奨しない」と発表しました。小学生以下の子どもへのコロナワクチン接種は必要なのでしょうか?
[回答2.]
厚労省は、 乳幼児(生後6か月~5歳)に対して、ワクチンが必要か、との問いに対して、「基礎疾患がない乳幼児でも重症化・死亡する例がある。乳幼児を対象にワクチン接種を進めることが適当。乳幼児の重症例の割合は少ないものの、オミクロン株の流行に伴い重症例数が増加傾向にあり、乳幼児を対象としたワクチン接種を推奨。接種回数はまずブースター(3回目)まで推奨。(←2回目接種後の効果が時間とともに低下することから。)」と回答しています。
令和5年(2023年)9月20日以降の追加接種については、「年齢別の重症化率や致死率は令和4年1~8月において、高齢者では高い一方、それ以下の世代では低い状況にあることを踏まえ、重症者を減らすという接種の目的のもと、重症化リスクが高い者を接種の対象としつつ、その他の全ての者には接種の機会を提供することとする。」としています。

参考:厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_qa_archive.html#infant_1

一方、WHOは健康な小児の場合、接種は1回のみで良いとしており、既に接種されていれば定期的な追加接種は不要としています。その他のワクチン適応については下記メージのTable.1を参照頂き、どのガイドラインに準じるかは主治医とよく相談して決定ください。

参考:WHO COVID-19 advice for the public: Getting vaccinated(英語ページ)
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/covid-19-vaccines/advice

[(事前提出)質問3.]
日本では薬局でインフルエンザの抗体検査キットが売っています。中国の薬局でも購入出来ますか?
[回答3.]
複数のメーカーが製造販売していますが、北京市内で購入しやすい製品を以下にご紹介します。尚、中国には「新型コロナ+インフル」同時抗体検査キットはありません。

「英諾特 三合一甲型乙型FY支原体抗原検測試剤盒甲乙流検測試紙」
A型インフルエンザウイルス/ B型インフルエンザウイルス/肺炎マイコプラズマ細菌の三つの抗原を検出出来ます。メーカーは北京英諾特生物技術股份有限公司(2006年設立/北京市豊台区/2022年上場/社員420人)。一箱20人分。価格20~30元/箱。

[(事前提出)質問4.]
一般的な風邪(37℃前後の発熱+くしゃみ+鼻水+鼻づまり)をひいたとき北京市内の薬局で購入出来る服用が簡単で効果が良い漢方製剤を幾つか教えて下さい。
[回答4.]
本日いくつか実際の製剤を持ってきました(写真)。日本の方には日本でおなじみの“葛根(かっこん)”(「葛根湯」や「カコナール」の主成分)が入っている「【北京同仁堂】感冒清熱顆粒」をお勧めします。風邪のひき初めに適しています。11種類の漢方成分だけのOTCかぜ薬で一回一袋×一日2回服用します。価格は12g/袋×10袋(5日分)で16~18元くらいです。

最後に…、セミナー会場に併設しました「お子様コーナー」では、おもちゃ、ぬいぐるみ、絵本等を準備し、「帰りたくない」と言って頂けるほど大変楽しく遊んで頂きました。

以上

生活環境委員会は今後もセミナーやメルマガを通して、生活に直接かかわる医療情報を皆さんにお届けして参ります。

文責:
生活環境委員会 副委員長 重村新吾

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