オンラインセミナー「コロナ禍を乗り越える心の整え方-レジリエンス-」を開催しました

2021-02-20

7月28日(火)、オンラインによるメンタルヘルスケアセミナー「コロナ禍を乗り越える心の整え方―レジリエンス―」を開催しました。

日本と中国の間での行き来が制限され、また、両国それぞれにおいて通勤や生活が制限される中で、駐在員や家族が不安や孤独を抱えている中、心の健康を維持・回復するための一助として、中国日本商会、北京日本倶楽部、北京日本人学校という北京の日本コミュニティ3団体が共同で主催した企画です。

当日は、オンラインでは最大時90名が聴講。端末の向こう側で複数名が聴講されているケースや、現場での先生方の聴講も含めると100名以上の皆さんが聴講されたことになります。事前登録状況では、男性が66%、女性が34%。受講地は北京が62%、日本が24%、その他が14%でした。

セミナーは、本企画の発起人でもある中国日本商会工業第三分科会副会長であり北京日本人学校運営理事の西山寛さんが進行。学校心理士であり北京日本人学校スクールカウンセラーの佐藤舞子先生と産業カウンセラーの高橋宏知先生からそれぞれ30分、20分の基調講演を行いました。(北京日本人学校多目的室から発信しました。)

佐藤先生からは、具体的なケーススタディとカウンセリングの専門性をベースとしたアドバイスがなされました。事前に7月7~22日、中国と日本で合計28件のケースにつき“半構造化面接”を実施。両国における対策や感染状況の違いが、受け止め方にも違いを生じているとの結果が報告されました。日本においては4割のケースが精神的なつらさを感じていたとのこと。そうした中で、政治への関心が深まったとか、日本人としての精神性に気付いたなどという声もあったようです。一方、在中国の人たちは「マイナスに思うことは無い」「影響は受けていない」「仕方がない」など前向きな反応が多く、精神的なつらさを感じていたのは1割。諦めの速さや組織体制への期待値の低さ、情報の少なさや共通体験をしている人の心理的近さなどが背景にあるようです。オンラインでの交流可能性の拡大や、ちょっと出かけたりすることを有難いと思うようになったという声もあったようです。
そして、“心身の健康を維持回復する能力”あるいは“逆境に対処し回復する能力”を指す「レジリエンス」の語源やこれを巡る研究成果と共に、心の整え方、すなわち感情との付き合い方、向き合い方が解説されました。臨床心理学者アルバートエリスの論理療法の中心概念である「ABC理論」に基づき、“非合理的なものの見方をしてしまう癖”を如何に変えていくかというもの。我々は大切なことほど“ねばならない”化、“であるべき”化してしまいやすいようです。これを“してもよい”などの見方に変えていく術を身に付けましょう。
先生からの「まずは自分、そして大切な他者へ」、すなわち「誰かのために頑張っている人こそ自分を大切に。他者を援助するときには、心のスペースに余裕をもって。みんな「優しい世界」を望んでいる(相手もそうだということを忘れがち)。『ともに生きる』をキーワードに(頼っても頼られても良い)」というメッセージは、一つ一つ心に深く刺さりました。

高橋先生からは、産業カウンセラーとしての知見の共有やアドバイスがなされました。調査によれば、心の病があると答えた会社は2017年までの調査では低下傾向が続きました。これはストレスチェック制度など新たな取組導入がかえって会社側のメンタルヘルス対策への意識の低下となったのではないかと考えられますが、2019年の調査では増加傾向に転換しています。これは、病の人が増えたのではなく会社としての認識が進んだということになります。心の病が最も多い年齢層は、過去においては権限と責任のアンバランスな30代でした。しかし、2012年以降、ものの豊かさから心の豊かさ、年功序列の崩壊、即戦力が求められるなどの構造変化を受けて、各年代が横一線に並んできている状況にあります。幅広い年代でメンタルヘルスは重要課題になっているのです。
メンタルヘルス対策については、国を挙げて取組が進められています。特に、労働安全衛生法が関係しており、法と指針に基づき各企業は対応策を実施することとされており、社員は、心の病が生じたら会社に相談してよいし、その権利があるのです。会社側はこれを受け止め、対応しなければならないとされています。2000年の指針では「事業所における4つのケア」として、セルフケア(本人が何をすべきか)、ラインによるケア(上司のサポート)、社内の産業保健スタッフによるケア(ラインから繋ぐ)、事業場外資源によるケア(外部の専門医やカウンセラー)が掲げられています。ストレスチェックは、事業所に実施が義務付けられている一方、労働者に受ける義務はありません。ただし自分に何が起こっているのか気付きになりますので会社からの案内には積極的な参加が望まれます。働き方改革関連法では産業医の活動環境の整備、健康相談を安心して受けられる体制、長時間労働者に対する面接指導が進められており、海外派遣駐在員への対応の指針も示されています。
周囲に気になる人がいた場合、先ずは安心できる環境を作り、ゆっくり耳を傾けてみましょう。無理に原因探しをしたり励ましたりしない、そして聞き上手になることを心がけましょう。相手の話す内容を評価したり、説教したりせず、話す人の話を正しく理解できているか時々確認するようにしましょう。
そんなお話でした。

基調講演後、日本に留まっている駐在員を代表して、中国日本商会工業第三分科会ライフサイエンスグループ会長の堀江清史さんと、全ライフサイエンスグループ副会長の田中覚さんがコメント。「中国の人と日本に残っている人の考えの違いに驚かされた。中国にいると諦めが早いが、日本では自分任せのルーズな管理のされ方で余計にストレスを感じる。自分の感情をモニターする重要性や、それをただ思うだけでなく、言葉にする、書き出すことの重要性を理解した。また、部下の相談にもう少しゆっくり向き合うべきだと思った」「大変参考になった。自分の感情とうまく付き合うだけでなく、相手の話を聞く、相手の感情を捉えられなかった部分があっただろうと思う」との感想が述べられました。

また、VISTAクリニックの李霞マネージャーからは北京において日本人もメンタルヘルス面での診察は可能であることやコロナ期間中の持病の薬についても相談を受けられることが紹介されました。さらに、熊琳弁護士からは、隔離期間である14日間の間も職員の勤務時間と見なされ、その間に心理的な不安や病気になったり、亡くなったりした場合、労災認定されたケースがあること(北京で1例。隔離期間の最後の5時間のところで心臓発作で死亡。100万元以上の北京初の労災認定となった)が説明され、社会保険をかけるなど会社側の対応の必要性が指摘されました。また、日本にいた時には部門毎の業務を行っていた人が、中国に来たとたんに全てを管理することになることが良くあるが、皆法律の専門家ではないのであり、全てを抱え込まず相談を、とのことでした。

最後に、北京日本人学校・栗本校長先生から、51の国と地域に100校ある日本人学校の中でもスクールカウンセラーのいる学校は稀であることを紹介しつつ、本セミナーが皆様の役に立つことを願うと共に、これを機に日本人学校への理解を深めていただきたいとの挨拶を以て、終了となりました。

出演者の皆様、素晴らしい講演、コメント、ありがとうございました。事前インタビューに応じていただいた28人の皆様におかれても、お忙しい中ご協力ありがとうございました。また、本セミナーは、中国日本商会の会員からの公募により選出されたJTBコミュニケーションズの技術対応により成功裡に発信されたことを申し添えます。最後に、セミナー開催を支持してくださった皆様、そして実際の事業運営に携われた全ての関係者の皆様のご協力とご尽力に感謝申し上げます。

200728_2200728_3(↑北京日本人学校多目的室から発信)

200728_4200728_5 (↑前週のリハーサル風景)