北京新生活安全サポート情報 No. 2/7 《北京で生活する際の予防接種のポイント 》

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《北京で生活する際の予防接種のポイント》

今回は北京で過ごす上での予防接種のポイントについてお伝えします。大きくまとめ
ると以下の3点です。
1.予防接種歴を確認できるよう母子手帳は自分で管理する
2.おとなはワクチン接種の抜け落ちに注意
・ 30代以降は麻疹、風疹
3.中国生活スタートに合わせて打ちたい予防接種
・ A型肝炎、B型肝炎は必須

4. 予防接種歴を確認できるよう母子手帳は自分で管理する
まず基本はここになります。母子手帳は予防接種状況を確認できるもっとも重要な
情報源です。大人の方では、母親がそのまま持っていてご自身で手元においておられ
ない場合も多いと思いますが、是非自分の母子手帳は自分の手元に置かれることをお
勧めします。予防接種欄をご両親に携帯電話で撮影してもらい、送ってもらう、など
でも良いでしょう。

5. おとなはワクチン接種の抜け落ちに注意
日本の予防接種はここ10年ほどで随分整ってきました。逆を言えばそれまでは「予
防接種後進国」とも言われていました。今の日本の予防接種はどこの国で過ごすにも
非常に基本的なものなので、全てを確実に打っておくことをお勧めしますが、日本の
予防接種制度上で抜け落ちが起きている部分をピックアップします。

[麻疹]
● 先進国でも感染後1000人に1人が死ぬ病気
麻疹は予防接種によって感染そのものが少なくなってはいますが、未だに先進国でも
感染者1000人に1人は死亡する病気です。世界的にみても小児の死亡原因の上位に入
る病気で、実際に死亡者の殆どが5歳未満です。

● 空気感染で感染力が極めて強い
結核と並んで空気感染をする病気として有名です。非常に感染力が強く、同じ電
車、部屋など空間を共有して感染します。最近でもコンサート会場や、柔道の大会参
加者での感染などが報告されています。日本でも流行が問題となっていますが、流行
そのものは中国のほうが多いとされています。

● 予防接種は2回必要
感染力も死亡率も高い病気ではありますが、予防接種で予防できる病気の代表でも
あります。1回の予防接種で概ね90%の人が抗体を獲得します。逆に言うと10%はそれ
でも感染してしまうため、ほぼ感染しない状況を作るため2回の予防接種が必要で
す。ちなみに米国に留学する際は厳密にこの2回の接種確認が求められます。2回予防
接種を受けたかどうかは、明確に記録が残っている必要があります。ご自身の母子手
帳、予防接種記録をみて2回の接種がない場合は追加の接種が必要と考えてくださ
い。ご実家に問い合わせ母子手帳を取り出し、予防接種のページをスマートフォンな
どで撮影し送ってもらっても良いと思います。

● 30代以降は予防接種1回のみの可能性が高い
日本では予防接種行政上、1回しか接種をされていないある世代が存在します。
麻疹予防接種が開始されたのは1978年ですが1回のみです。2回接種になったのは
2006年、途中中高生に2008年から2011年まで緊急処置として2回目接種が追加されま
した。簡単に言うと30代以降の方はまず1回の接種しかないと考えて良いでしょう。
この世代の方へは、繰り返しになりますが2回の予防接種記録が明確にある場合を除
いて追加の予防接種を強くおすすめします。

● 北京は8ヶ月、1歳半、6歳の3回スケジュール
中国は日本よりも流行が多い、と前述しました。それもあり北京市の予防接種は日
本よりも幾分前倒しになります。日本では定期接種は1歳、6歳(小学校就学前)に
なっていますが、北京市は8ヶ月でMR(麻疹風疹)、1歳半でMMR(麻疹風疹ムンプ
ス)、6歳でMMRとなっています。なるべく早く免疫をつけるために8ヶ月から開始し
ますが、まだこの時期の乳児の免疫応答が充分でなく1回とカウントできないことが
あるため1歳半に追加、その結果として正味3回となっています。北京で過ごされる場
合は私としては上記スケジュールをおすすめします。
麻疹予防接種2回の間隔は最短1ヶ月あいていれば良いとされています。周囲で流行
が出てしまっているなどの状況があれば6歳を待たず打つことも可能です。ちなみに
中国には麻疹単独のワクチンがありません、そのためMR(麻疹風疹)MMR(麻疹風疹
ムンプス)で代用します。

[風疹]
風疹は症状が軽く、それだけでは重症化することが少ない病気です。しかし妊婦さ
んに感染した場合、先天性風疹症候群という重い障害を胎児にかなり高頻度で起こ
し、社会的に大きな問題になっています。
これも麻疹と同様、生涯2回必要であり、MRワクチンで1歳で接種し、小学校就学前
で2回目を接種します。そして接種が不十分であった世代も同様です。30~40代のこ
れから妊娠を考える方に免疫が不十分であることが大問題となっています。これから
妊娠を考えている女性は、ご主人も感染源になりえます。風疹は特にこれから妊娠出
産を計画しておられるご夫婦に、「2回の」接種があるかどうかの確認を強くお勧め
します。

[水痘]
いわゆる「みずぼうそう」ですが、脳炎での死亡例が低頻度ながらあります。さら
に年齢が上がるに連れて重症度があがり、13歳以上では高頻度で入院、重症例も増え
ます。また低頻度ですが妊婦さんが感染すると風疹のように胎児に障害を残す疾患と
しても知られています。
水痘が定期接種に加わったのは、ごく最近の2014年10月からです。それも1歳から3
歳になる直前まで、というかなり限定された期間での定期接種になっています。その
ため、打っていない方がお子さん含め、ある程度おられます。基本的には生涯2回接
種が必要です。全てのお子さんの確認をおすすめしますが、特に水痘にかかったこと
のない13歳以上の方は急いで接種をお勧めします。

[ムンプス]
いわゆる「おたふくかぜ」です。日本では未だに定期接種に加わっていません。ご
両親が意識をしていないと接種していない予防接種です。以前から難聴を後遺症とし
て残すことは知られていましたが、2018年に300人弱に1人とかなり割合が高いことが
報告され衝撃を与えました。そのうち8割以上が高度難聴で、率直に言って安全にか
かれる病気ではありません。実際私もムンプス難聴の方に数人お会いしたことがあり
ます。中国含め諸外国では一般的にMMR(麻疹・風疹・ムンプス)ワクチンとして流
通し定期接種になっているところがほとんどです。北京ではムンプス単独ワクチンは
入手が難しいかもしれませんが、MMRで代用することが可能です。基本的には生涯2回
接種が必要で、北京市では1歳半、6歳のタイミングで定期接種として提供されていま
す。

[日本脳炎]
ブタと蚊を媒介して感染する、つまり蚊に刺されて起こる脳炎ですが、死亡率が
30%と高く、生き残っても神経学的後遺症(発達の遅れなど)を45~70%の高率で残す
怖い病気です。2015年に千葉県で0歳児が発症したことが話題を呼びました。北京も
流行地域に入っており、同時に北京市の小児定期予防接種にも1歳から組み込まれて
います。
日本では自治体によって打ち始める時期が異なりますが、3歳からというところが
多いと思いますが、3歳まで待つ必要は医学上ありません。予防接種そのものは生後
6ヶ月から可能で、私としてはこの月齢からをおすすめします。注意点として北海道
は流行が無かったため定期接種が2017年4月までなかった、という点です。そのため
北海道で幼少期を過ごされた方はまず接種されていません。
3回の基礎接種があれば、その後は5年に1回程度追加接種をすれば免疫が維持でき
るとされています。中国におられる間はこの追加接種をお勧めします。ちなみに中国
では一般的に日本とは異なり生ワクチンが使用されていますが、日本と同じ不活化ワ
クチンもあります。予防接種を中国でされる際は、生ワクチンと不活化ワクチンのど
ちらを希望するのかを明確に伝えるほうが良いでしょう。

[破傷風]
土壌に普通に住んでいる菌で、錆びた釘を踏抜くなどの傷が汚れた場合に感染しま
す。発症すると呼吸筋麻痺で人工呼吸器管理になるなど致死性の高い病気です。予防
接種がなくても予防のために外傷後に破傷風グロブリン製剤を打つ、という方法が取
れますが、そもそも中国の地方都市では手に入らない可能性が高いのでやはり予防接
種で免疫をつけておく必要があります。
以前は三種混合(DTP)、現在は四種混合のなかに含まれています。逆を言えば三
種混合やDTPが定期接種になる前の世代の方は普通にかかってしまいます。全国的に
接種が開始されたのが1968年なので、1968年以前に生まれた人は免疫がない可能性が
高いといえます。
北京では破傷風単独のワクチンがなかなか手に入りにくいのが難点です。ただし、
破傷風予防接種の2回目から3回目の間隔はかなり融通が効き1年半まで待てます。1回
目2回目を日本で短期間で打ってしまい3回目は次の一時帰国時に、という形でもよい
でしょう。3回の基礎免疫を得た後は5年から10年おきに1回の追加接種が必要です。

6.中国生活スタートに合わせて打ちたい予防接種
日本の過去のルーチン以外で重要性の高いものをピックアップします。中には世界
的には必須になっているものが含まれます

[A型肝炎]
食べ物を介して口から感染する肝炎です。食品衛生のある程度整っている北京、上
海でも必須とされています。ちなみに日本以外のアジアで過ごすならきちんと受けて
おくべき予防接種とされており、北京でも小児定期予防接種に1歳半から入っていま
す。
日本のワクチンと海外のワクチンでも互換性が概ねある、と言われています。スケ
ジュール上1回目と2回目を受けて、3回目を打つ前に北京に来てしまった、という方
が多いと思いますが、意外と2回目から3回目の接種間隔は融通が効きます。少なくと
も6ヶ月以上、1年半までは良いだろう、とされているので一時帰国時に3回目を打
つ、ということでも大丈夫ですし、北京で3回目を打ってしまっても良いと思いま
す。
ちなみに日本は3回の接種ですが、多くの海外のワクチンは2回接種です。

[B型肝炎]
体液を介して感染する肝炎です。感染経路としては、輸血、違法注射などが知られ
ていますが、性感染症としても有名で、もっとも一般的経路です。感染力がとにかく
強くHIVウイルスの100倍ほど、歯ブラシの共用でも感染すると言われています。医療
現場では針刺し事故で何もしなければ感染率が30%です。慢性化すると最終的に肝硬
変、肝臓がんに至るため予防が非常に重要となります。年齢が低くなるほど慢性化し
やすいという特徴もあります。
中国ではB型肝炎のウイルス保有率が高く(10%ほど)、特に中国で性風俗を含めて
性的接触があるなら予防接種が必須です。小さなお子さんの場合、濃厚接触によって
両親祖父母から感染するケースもあり、幼稚園など多数の子どもが濃厚に接触しあう
環境でもやはり接種が望まれます。WHO(世界保健機構)は「全ての人が受けておく
べきワクチン」としています。
2016年10月から日本でやっと定期接種となりました(北京では随分前から定期接種
ですが)。これは北京にいる、いないにかかわらず、皆様に接種をお勧めします。接
種スケジュールはA型肝炎と同様でやはり3回目はかなり融通が効きます。1年半まで
は空いても良いので帰国時に3回目も可能ですし、北京で接種も可能です。

[腸チフス]
サルモネラの一種によっておこる病気です。やはりA型肝炎同様、汚染された食品
が感染経路となりますが、人から人にも伝染していきます。重症例では亡くなる場合
があります。
予防接種は1回で概ね3年ほど持続しますが、50~80%程度の効果と言われるので、
効果が微妙といえば微妙かもしれません。
特に地方出張で衛生の良くない場所で食事をする機会がある方などは接種が勧めら
れます。しかし予防接種は日本でも海外旅行相談ができる医療機関にはありますが、
北京では難しいかもしれません。

[狂犬病]
犬に限らず、猫、コウモリ、狐など様々な哺乳類に噛まれることで感染します。噛
まれなければかかりませんが、発症するとまず100%死んでしまう病気なので、そこの
リスクをどう考えるかで接種するかどうかが分かれます。中国全土で毎年2000人ほど
亡くなっています。一応「北京市街地で過ごす旅行者」の場合は、積極的な接種まで
は推奨されていません。しかし長期滞在する、郊外に出ることもある、特に子供で動
物がいると近づいていってしまう場合はやはり接種がある方が安全と思います。
破傷風と同様、予防接種を受けていない場合は狂犬病グロブリン製剤を打つ必要が
ありますが、やはり入手できる場所が中国国内でかなり限定されます。予防接種をし
ていれば、大抵の場合はグロブリンを打つ必要が無いこと、とにかく発症するとほぼ
確実に死んでしまう病気であること、などを考えるとやはり接種する方が無難でしょ
う。
北京市内では狂犬病予防接種ができる施設が指定されています。百度などで「北京
市狂犬病免疫予防門診」と検索すると出てきます。外資系ではユナイテッドファミ
リー病院が接種可能な病院となっています。
ちなみに狂犬病にかかっている小動物は10日ほどで死んでしまうので、噛んだ動物
が10日以上生きていれば狂犬病にはかかっていない、と判断できます。

以上です。長文にお付き合いいただきありがとうございました。まだ細々とした部
分はありますが、予防接種に関してその他疑問点などあれば、またいつでもご相談い
ただければと思います。

文責:
北京ユナイテッドファミリーCBDクリニック (北京和睦家朝外診所)
家庭医/全科医
日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医/指導医
本山哲也