図書だより016 北京の街が登場する小説、絵や図の多い中国語の本ご紹介

2021-03-31

今回は、北京の街が登場する小説3冊と、絵や図の多い中国語の本をご紹介いたします。
中国日本商会の元事務局長で2017年4月~2020年10月まで北京で駐在された渡辺泰一様より、ご推薦いただいた図書館蔵書の本になります。

北京の街が登場する小説
池波正太郎の小説などには、江戸の地名が多数登場し、その場所に行ってみると小説のとおりに寺社があったり、道が曲がっていたりして、楽しむことができます。
書籍の内容の面白さは横に置き、北京も長い歴史のある場所ですので、同様に現代も残る場所が出てくる小説がないか探してみました。

『黄砂の篭城』 松岡圭祐 講談社
義和団事件を題材にした小説で、舞台は東交民巷です。
書籍には当時の東交民巷の地図もついていますが、これをみながら現場に行くと、あちこちに金色の看板で示されている〇〇大使館址と場所が異なっている場合が多く、戸惑うことになります。では適当に創作されているのかというとそうではなく、どうやら義和団事件後に破壊された大使館を再建する際、建てやすい場所に移転したようで、金看板の解説をよく読むと、1902~1905年くらいに建てられた建物が多いようです(義和団事件は1900年)

『駱駝祥子』 老舎 岩波書店
中国の有名な作家・老舎による車夫・祥子の話で、有名な戯作にもなっているようなので、多くの中国人もあらすじは知っているようです。民国期の北京を人力車で駆け抜けるため、通りや胡同の名前が多数登場します。
ただし車夫の報われない、つらい生活の話ですので、明るく楽しい作品ではなく、街中を疾駆するという点で共通するせいか、電動バイク・デリバリの人達と重ね合わせてみてしまうのは私だけでしょうか。

『乾隆帝の幻玉-老北京骨董異聞』 劉一達 中央公論新社
民国期を舞台にした乾隆帝の玉椀をめぐる物語で、前門の東側の花市や東便門などが中心です。
民国期の中国の巷間の話のため、駱駝祥子と同様になんとも封建的な世界が描かれていますが、胡同の住居のつくりや茶館で商売や情報交換(おしゃべり)する骨董屋など、庶民の様子が活き活きと描かれているように感じ、描写につられて酸梅湯が飲みたい気分になったりします。

このほか、蒼穹の昴のシリーズは、読んでから故宮に行くと世界遺産を単に観光しているだけでなく、物語の世界を廻っている気分になります。

絵や図の多い中国語の本
漢字(中国語)を読んである程度の意味を解することはできる、ただ頑張って読むにしても大量に読むのはツライので嫌、そういう方は少なくないのではないでしょうか。

『中国历史地图绘本 《中国历史地图绘本》编委会』 中国大百科全书出版社
中国の歴代王朝を2-4ページで紹介し、勢力範囲を地図で示しています。子供向けの歴史の本で、この本のほかにも他の出版社から類似のものも出ていますが、日清戦争くらいで終わっているものが多い中で、この本は中華人民共和国建国くらいまで記されています。
イラストが多く、説明文が短いので、何とか耐えて読んでいくことができます。しかし、だいぶ読み進めたつもりでもまだ唐の時代だったりして、中国の歴史の長さをあらためて感じてしまいます。

『满汉全席』(4冊) 扬眉 中国致公出版社
漫画です。ストーリーは紫禁城に料理人として雇われた主人公の視点から満漢全席を紹介していくものと思われ、巻によっては日本人と思しき登場人物もいます。(何せ中国語をきちんとマスターしていないので、内容を正確には理解できていない)
人物などはヘタウマ系の絵ですが、料理や素材は結構写実的に(大きめに)描かれていて(全編カラーなのに、料理の大半が茶系なのはさすがに中国料理!)、絵をみているだけでも楽しめ、同時に胃もたれも感じると思います。

『G.R白酒品鉴』 杨官荣 旅游教育出版社
酒関係は関心のある方が多そうなので紹介します。
どうやら白酒は毎年品評が行われているようで、この本はその結果を星の数で紹介してくれています。私は2017年版を持っています。全ての白酒を網羅している訳ではありませんが、有名な銘柄は登場しますし、価格帯別に紹介されているので、ある程度の参考になる方が多いのではないでしょうか。
前半は、文ばかりですが、白酒の分類なども説明しており、興味のある方、読める方には、これも参考になると思います。

このほか、子供向けの本(対象年齢が低いほど)は、文が短く挿絵もあり、神話や昔話、図鑑など、中国の理解を深めて、中国人一般の共通認識となっている事項を理解するうえでは大きな助けになります。気が付けば50歳を過ぎたおじさんの書棚に大判の絵本が多数になっていました。
また、連環画は掌サイズで、各ページが挿絵と文で構成されており、幼児用絵本よりは読む文の量が多くなりますが、紙芝居の感覚でみることができます。20世紀の前半から中盤に多数出版され、貸本などで使われたものが多いそうです。質の悪い紙の素朴なものが多く、内容も少々時代掛かっているようにも感じますが、安価なので一冊くらい記念品のつもりで持っていてもよいかもしれません。

紹介者 渡辺泰一 北京駐在2017年4月~2020年10月。北京での趣味はシェア自転車でぶらつくこと。